子宮蓄膿症は避妊手術をしていない女の子の犬・猫によく見られる病気です。
この記事で詳しくご説明します。
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監修者プロフィール:小原 健吾
所属学会:日本小動物歯科研究会、比較歯科学研究会 / 趣味:サーフィン、SUP
どんな病気?

子宮蓄膿症は細菌感染による炎症が起こり、字の如く子宮に膿がたまってしまう病気です。
大げさかもしれませんが、避妊手術をしていない犬はだいたい発症します。
未避妊の中齢以降の犬が「なんだか元気がない」という主訴で来院すると、多くの獣医師は子宮蓄膿症をはじめに疑うくらい多い病気です。
発情出血が起きてから1~2か月の頃が発症しやすく、発情に伴う黄体ホルモンの分泌が関わっています。
(犬は妊娠の有無にかかわらず黄体ホルモンが分泌されます。)
高齢であればあるほど発情を繰り返すことになり、子宮がホルモンの影響を受けるため細菌感染が起こりやすくなります。
● 特徴
・避妊手術をしていない中齢以降の犬で多い
・発情が来てから1~2か月経ったころに多い
・陰部から膿が出ているパターンと出ていないパターンがあり、出ていないときの方が重篤になりやすい
・時には命の危険も伴う病気
・症状
元気・食欲低下、嘔吐、発熱、尿量が増える、飲水量が増える
診断の進め方
血液検査、超音波検査、レントゲン検査を組み合わせて診断します。
これらの検査は麻酔は必要ありませんが、子宮蓄膿症の確定診断にはなりません。
確定診断を得るには手術で子宮を取り出し、子宮の中にたまっている膿を確認する必要があります。
では、手術の必要性を見極めるにはどのような判断をもとにしているのでしょうか?
● 診断のポイント
・血液検査
白血球などの炎症性の病気があるときに異常となる項目を確認します。
他にも、合併症(子宮蓄膿症に続発する病気)として腎臓病などが起こりえるので、その評価を行います。
・超音波検査
お腹の中で腫れている子宮を確認します。
子宮蓄膿症の子宮はほとんどが特徴的に腫れています。
他にも、腹水の有無や他の臓器の形態に異常が無いかをチェックします。
(子宮が破けていると腹水がたまります。)
・レントゲン検査
超音波検査と同様に、腫れている子宮や他の臓器を確認します。
これらの検査を総合的に判断して子宮蓄膿症の可能性がどれだけ高いかを判断すると同時に、合併症や別の病気の有無を確認します。
治療法は?

治療法は2つあります。
● 子宮蓄膿症の治療法
・外科治療
手術をして子宮と卵巣を摘出します。
早く治り再発もしないのでほとんどのケースにおいて外科治療を推奨します。
・内科治療
手術をせずにお薬で治療する方法です。
持病のため手術が選択できない場合や、どうしても出産をさせたい場合など、特殊なケースで選択します。
主に抗生剤が使用され、特殊なホルモン剤も適応になる場合があります。
治療後も再発するリスクは高いので細やかな経過観察が必要です。
子宮蓄膿症が重篤な時は内科治療は選択できず、外科治療を選択せざるを得ない場合もあります。
治療法をご提案する際は、その子に合わせてさらに細かいご説明や必要な日数・ご費用などをお話いたします。
どんな経過をたどるの?
外科治療を行った場合についてご説明します。
● 子宮蓄膿症の経過
外科治療を行った場合、だいたいはすっきり良くなり、死亡率は0~5%と報告されています。
手術後は3~5日ほどの入院治療を行い、退院後は1~2週間抗生剤のお薬を飲んでいただきます。
退院後はこまめに通院していただき、問診や血液検査などで回復具合をチェックします。
手術をしてから2週間後に傷の抜糸を行い、治療終了となることが多いです。
しかしながら、手術後にも腎不全、敗血症などが起こることがあるので予断は許されません。
初めの検査の時点で全身性の合併症が起きていたり子宮が破裂していた場合、死亡率は20~60%程度まで上がることもあります。
回復してある程度時間が経った後も、まれに子宮の切除した断端が化膿することもあるので注意が必要です。
子宮と卵巣を摘出する避妊手術を行うことで、子宮蓄膿症の発症を確実に防げます。
避妊手術のメリットは他にもたくさんあります。
過去の記事でも避妊手術について取り上げていますので、ぜひご一読ください。