犬は通常、永久歯が萌える際に乳歯が自然に抜けますが、乳歯が残ったままで問題を引き起こすことがあります。
犬の乳歯遺残は、歯並びや噛み合わせ、さらには歯茎や永久歯の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
そのため、治療が必要になります。
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監修者プロフィール:小原 健吾
所属学会:日本小動物歯科研究会、日本獣医歯科学会、日本獣医エキゾチック動物学会 / 趣味:サーフィン、SUP
乳歯遺残とは

犬は生後4ヶ月から6ヶ月頃に乳歯が永久歯に萌え替わるのが一般的ですが、乳歯が抜けずに残ってしまうことがあり、これを乳歯遺残(にゅうしいざん)といいます。
● もっと詳しく
犬では通常、永久歯が萌えはじめ、乳歯の半分~2/3程度の長さになると乳歯が抜け落ちます。
切歯(前歯)や臼歯(犬歯の奥の歯)では乳歯と切歯が共存している期間は数日程度、犬歯では1~2週間と言われています。
これらの期間を過ぎても残っている乳歯があることを乳歯遺残と言います。
乳歯遺残の影響
乳歯遺残は特に小型犬の乳歯の犬歯と切歯が遺残することが多いです。
● 乳歯遺残の影響
・歯周病
乳歯と永久歯の間に歯垢が溜まりやすく、これが歯周病の原因になります。
上の写真の様に、乳歯遺残のある個所だけ歯周病が進行することはよくあります。
・歯並びの問題
特に犬歯に不正咬合が生じると、上下の犬歯が当たって歯が削れてしまったり、下顎の犬歯が上顎の口蓋に当たるなど、大きな問題になることがあります。
歯の萌え替わりの時期に永久歯と乳歯が共存する期間は上顎犬歯では2週間、下顎犬歯では1週間と言われています。
この期間を過ぎると永久犬歯が正しい位置に萌えず、不正咬合となることがあります。
乳歯遺残の治療方法
では、愛犬に乳歯遺残が認められたらどのように治療するのでしょうか。
● 乳歯遺残の治療方法
・抜歯
最も推奨される治療法は抜歯です。
子犬に乳歯遺残が認められた場合、当院では去勢・避妊手術の際に抜歯を推奨しております。
こうすることで不正咬合のリスクを減らしたり、不正咬合があっても正しい位置に矯正しやすくなります。
また成犬の場合、遺残した乳歯の抜歯と歯周病治療のためのスケーリングなどの処置を同時に行うことを推奨しております。
ご自宅ではなかなか乳歯遺残に気が付かないことも多いです。
特に成長期の子犬では、ワクチンなどの時に定期的に口腔をチェックし、歯の萌え替わりをチェックしてもらうようにしましょう。