甲状腺機能亢進症は特に中高齢の猫に代表的な内分泌疾患(ホルモンの病気)です。
この記事で詳しく解説いたします。

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監修者プロフィール:小原 健吾
2017年、鳥取大学農学部獣医学科卒業 趣味:サーフィン、SUP、温泉
甲状腺機能亢進症とは
甲状腺(喉のあたりにある内分泌器官)が過剰に甲状腺ホルモンを分泌することで、全身の代謝が異常に高まる病気です。
多くの場合は良性の腫瘍(腺腫)が原因で、悪性腫瘍(甲状腺癌)はまれです。
甲状腺ホルモンが分泌できなくなる、甲状腺機能低下症は猫ではほとんど認められません。
● 主な症状
・体重減少
一番よくある症状。
代謝が活発になり、エネルギー消費が増えるため、食欲があっても痩せることがあります。
筋肉も衰えることが多いです。
・食欲の異常(増加や低下)
代謝の促進に伴いエネルギー不足を補おうとして、異常なほど食欲が増すことがあります。
「盗み食いをするようになった」という飼い主の声もあります。
反対に、食欲が低下することもあります。
・被毛の状態が悪くなる
毛がバサバサ・脂っぽくなったり、抜け毛が増えたりします。
グルーミングのしすぎで脱毛や皮膚の炎症が起きることもあります。
・多飲多尿
水をよく飲むようになり、尿の量が増えます。
これは腎血流量の増加や甲状腺ホルモンの影響によって腎臓の濃縮力が落ちるために起こります。
・嘔吐・下痢
消化管の運動が活発になりすぎることで吐いたり、軟便や下痢が続くことがあります。
・活動性の増加・落ち着きがない
性格が変わったように感じるほど活発になることもあります。
ジャンプを繰り返したり、夜間に走り回ったりします。
・攻撃性や神経質になる
イライラしやすくなったり、触られるのを嫌がったりします。
ストレスへの耐性が低下することもあります。
・心拍数の上昇・心雑音
心拍数が通常より高くなり(150~220回/分以上)、心音に異常(心雑音)が認められることもあります。
・呼吸が速くなる
心臓や代謝の負担が大きくなるため、軽い運動でも呼吸が速くなります。
・眼の輝きが強くなる、見開いているように見える
「興奮状態」に近い見た目になります。
目が爛々とし、視線が鋭くなる場合もあります。
・高血圧
二次的に網膜剥離→失明の危険もあるため注意が必要です。
・隠れていた慢性腎臓病が顕在化
甲状腺機能亢進症の治療をして体内の代謝のバランスが正常化すると、腎臓に流れる血流が低下して、隠れていた腎不全が悪化して見えてくる場合があります。
上記のように様々な症状が出ますが、体重減少は9割以上の猫に認められます。
その他の症状は必ずしも認められるとは限らないのでご注意ください。
診断方法
動物病院で以下を組み合わせて診断します。
● 診断方法
・血液検査
最も一般的で最初に行う検査です。
多くの場合、T4値が正常上限を超えていれば診断可能です。
肝臓の数値が上がっていることもあります。
・身体検査
身体を触って痩せているか、被毛の異常があるか、脱水状態などを検査します。
頸部の触診では腫大した甲状腺が蝕知できることがあります。
聴診では心臓の音に異常がないか確認します。
・画像検査
心肥大(心臓が大きくなっている状態)が認められることがあり、レントゲン検査や超音波検査を行います。
治療
甲状腺機能亢進症の治療は大きく分けて3つあります。
● 治療法
・内科的治療
甲状腺ホルモンの分泌を抑制する薬を用います。
基本的には一生涯継続する薬になります。
一般的で主流の治療ですが、投薬開始から1か月は副作用(食欲不振、顔の痒み、嘔吐、肝障害など)に注意し、細かな診察が必要です。
慢性腎臓病を併発していることが多いため、腎機能も細かく検査する必要があります。
・外科的治療
甲状腺を摘出する手術を行います。
適応になる場合は、甲状腺の悪性腫瘍のせいで甲状腺機能亢進症を発症している場合、内科治療で効果が認められない場合、投薬ができないなどで内科治療が行えない場合などです。
年齢や慢性腎不全の有無、手術の合併症や術後のホルモンバランスの乱れなども考慮して手術の判断を行います。
・食事療法
ヨウ素制限食(ヒルズ y/d)を用いることで甲状腺ホルモンの分泌を抑え、症状を緩和できる場合があります。
この治療を行うには、療法食を食べてくれること、療法食以外の食べ物を確実に制限できることが必要になります。
適切に治療すれば良好な生活の質を保てる病気です。
高齢猫では腎機能とのバランスが重要。
治療で甲状腺ホルモンを下げすぎると隠れていた腎不全が表面化することもあるため、定期的な検診が大切です。

