犬にも甲状腺疾患は存在します。
そのほとんどは甲状腺ホルモンの分泌が減る、甲状腺機能低下症です。
この記事では、犬の甲状腺機能低下症についてご説明します。

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監修者プロフィール:小原 健吾
2017年、鳥取大学農学部獣医学科卒業 趣味:サーフィン、SUP、温泉
甲状腺機能低下症とは
犬の甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの分泌が不足する病気で、中高齢の犬によく見られる内分泌疾患です。
甲状腺は首の前側にある小さな器官で、「チロキシン(T4)」や「トリヨードサイロニン(T3)」というホルモンを作っています。
これらは全身の代謝を調整する役割を果たしており、不足すると体の機能が全体的に低下します。
代謝が落ちるため、症状はゆっくり進行し、様々なものが現れます。
● 甲状腺機能低下症の症状
・全身的な症状
無気力、活動性の低下
顔つきが情けなくなる
体重増加(食欲は変わらないか減る)
寒がる
・皮膚・被毛の変化
毛が抜けやすい(特に胴体)
被毛の乾燥・脱色
皮膚の黒ずみ(色素沈着)
皮膚が厚くなる
・その他
心拍数の低下
生殖機能の低下(発情不順、不妊)
神経症状(まれ):歩行困難、意識混濁
症状がゆっくり進むため「老化」と誤解されやすいです。
完治はしませんが、治療によりほぼ正常な生活が可能となります。
他の病気(クッシング症候群など)と似た症状があるので正確な診断が重要です。
診断方法
主に血液検査で診断できます。
● 診断方法
甲状腺ホルモンが血液中にどれくらいあるかを調べます。
当院では、健康診断の時や甲状腺機能低下症が疑われる場合は初めにT4(総チロキシン)を測定することが多いです。
その結果が低ければ、追加検査でfree T4(遊離チロキシン)とTSH(甲状腺刺激ホルモン)を測定します。
得られた結果をもとに、甲状腺機能低下症の診断を下します。
TSH、Free T4 (FT4) は、甲状腺の機能を評価するための血液検査で用いられる指標です。TSHは脳下垂体から分泌されるホルモンで、甲状腺ホルモン(T4やT3)の分泌を促します。FT4は甲状腺から分泌されるホルモンのうち、血液中のタンパク質と結合していない遊離型のT4を指し、直接的に甲状腺ホルモンの作用を発揮する部分です。
その他
高コレステロール血症が併発していることが多い
高CK(筋酵素)が見られることもある
T4が低いからといって甲状腺機能低下症と診断してはいけません。
「甲状腺は正常だけど、さまざまな病気によって甲状腺ホルモンが低値になる」という病態があります。
これはユーサイロイドシック症候群という名前がついていて、重篤な基礎疾患や慢性疾患に伴って発生します。
体が「病気を治すことを優先」するため、一時的に代謝を下げて省エネモードに入るイメージです。
甲状腺の病気ではないので、安易にホルモン補充を始めてはいけません。
治療
足りなくなった甲状腺ホルモンを補充することで治療を行います。
● 治療法
甲状腺ホルモン製剤を用い、基本的には一生涯継続します。
治療によって改善がみられるまでの期間は症状によって異なります。
元気がなくなっている場合は1週間以内に改善することが多く、皮膚や被毛の異常は数か月かかることがあります。
治療を開始してから1か月後を目安に血液検査を行い、薬の過不足がないかを確認します。

