猫は犬よりもトレーニングが難しいですが、基本的な進め方は犬と同じです。
猫ゆえの注意点も交えてお話ししていきます。
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監修者プロフィール:小原 健吾
所属学会:日本小動物歯科研究会、比較歯科学研究会 / 趣味:サーフィン、SUP
猫の歯科疾患

我々人間は歯や歯茎の違和感・痛み、歯が欠けたなどの症状を言葉にして表すことができ、自分で歯科医院を受診することができます。
猫はこうした症状を隠すことがとても多く、ご飯を食べたそうだが食べない、変な食べ方をする、体重減少、よだれ、口臭を訴えて来院されることが多いです。
ご家族様と私たち獣医師がチームとなって症状をよく視る(診る)ことが必要となります。
● 猫の歯科疾患
犬と同様、歯周病は猫で最も多く認められる歯科疾患の1つです。
現在では2歳までに猫の70%に歯周病の症状があるといわれています。
歯周病はお口周り以外にも全身に悪影響をきたす病気でもあります。
また猫では口内炎や吸収病巣といった、犬にはあまり認められない疾患も多いです。
口内炎は主に口の奥の粘膜が真っ赤に爛れてしまう病気で、強い痛みを伴います。
原因ははっきりと分かっていませんが、猫カリシウイルス感染症などが関係しています。
吸収病巣は歯が溶けてなくなってしまう病気です。
発症の原因はわかっておらず1/3-2/3の猫で発症し、1頭あたり平均的に3本が発症することが知られています。
歯周病の予防、早期発見のためにも歯磨きができるようになるといいですね。
お口タッチの練習
歯磨きを始める前に、まずはお口を触られることに慣れていきましょう。
普段から「顔やマズル(鼻先)を触ってすぐに褒める」を繰り返して口元を触られることに慣れさせます。
次に、唇をめくり、歯や歯茎にタッチすることに慣れさせます。
それができるようになったら、歯茎に沿って奥歯の方へ指を入れていきましょう。
手の中に小さなオヤツを握りながらタッチするのもおすすめです。
このStepで愛猫と飼い主さんにとって楽な姿勢を探します。
● お口タッチのコツ
マタタビや好きなオヤツで気を逸らしながら行い、嫌がったら無理をせず撤退してください。
押さえつけたり大きな声を出すのはNGです。
とにかく口を触られることに好印象を持たせてあげてください。
デンタルシートを使ってこすり磨き
シートを指に巻いてお口タッチの練習をやり直します。
指に巻いたシートで、最初はおでこやマズルを撫でてあげましょう。
次に唇をめくったり、歯や歯茎にタッチ。
少し慣れてきてから優しくこすってみましょう。
前歯になれたら奥歯まで、慎重に進めてみてください。
● デンタルシートの上手な使い方
歯磨きシートの上1/3くらいの位置で、人差し指と中指で挟んでください。
指先の余っているシートを親指側に折り、シートの端を親指と人差し指の付け根でキャッチします。
人差し指の下で余っているシートを、中指側に回して人差し指に巻き付けます。
さらにシートが余った場合は、人差し指と中指で挟みます。
こちらのInstagramページで、デンタルシートの巻き方をご紹介していますので、是非チェックしてみてください。
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https://www.instagram.com/reel/DCLi62poIpn/?utm_source=ig_web_copy_link
歯ブラシの前に綿棒で挑戦
口の小さな愛猫は慣れるまでは綿棒がおすすめです。
● 歯ブラシの前に綿棒で挑戦
いきなり口に入れるのはNGで、おでこや頬などを綿棒で撫でるなど、できるだけ好感を持たせてあげてから使用してください。
デンタルジェルをつけてあげるとより効果的ですし、美味しいだし汁を染み込ませてあげてもOKです。
歯ブラシにチャレンジ
綿棒ができるようになったら、歯ブラシを挑戦してみてください。
できるだけヘッドの小さなものをお勧めします。
● 歯ブラシ導入のコツ
歯ブラシも同様に、マズルなどを撫でたりすることから始めましょう。
歯ブラシは怖くないモノとわかってもらえたら、慎重に口に入れてみてください。
歯磨きは噛むと意味がないのでご注意を。
近くにコップを用意して、歯ブラシについた汚れをこまめに濯いでください。
デンタルグッズのご紹介

最後に、当院で取り扱っているデンタルグッズの一部をご紹介します。
フードやオヤツは簡単で、噛むときに使う臼歯のケアに有効です。
お口を触れる子もそうでない子も、普段から取り入れてみてはいかがでしょうか?
● オススメのデンタルグッズ
『t/d』
ヒルズ・サイエンスダイエットから販売されている、歯周病用の特別療法食です。
大きく特殊な粒を噛むことで歯垢、着色、歯石の蓄積を減らすことが科学的に証明された、唯一の犬猫用フードです。
VOHC(米国獣医口腔衛生協議会)認定マークがついており、デンタルケアグッズの中でも効果があり信用できる製品です。
『プロバイオサイエンスPET』
口腔内には悪玉菌と善玉菌がいて、悪玉菌が歯周病菌です。
このサプリメントは善玉菌を用いて歯周病を予防するためのものです。
ヒトの歯医者さんででお勧めされているものと同じ製品で、動物病院でしか買えません。
8時間程度少量の水でふやかしてからお口に塗ってあげるとより効果的です。
無味無臭の粉タイプとバニラフレーバーの粒タイプがあります。
『オーラティーン・デンタルジェル』
3つの抗菌作用のある天然酵素を配合し、歯周病菌を減らして口腔内環境を整えます。
舐めさせるだけでも効果はありますが、Step2~4で併用することでより効果を得られます。
『インテリデント』
2つの層にわかれた構造により、噛むことで歯石の沈着を抑えます。
3つの有効成分を配合し、口腔内環境を整えます。
『LION デンタルシート』
特殊な繊維で汚れをかきとり、明日葉成分配合で口腔内をキレイに保ちます。
『LION デンタルブラシ』
歯周ポケットの状態に合わせて毛先のタイプを3種類から選べます。
ヘッドも小さく毛も短めなので、おススメです。