JOURNAL診療記録

猫の口内炎

猫の口内炎がという病気はご存じでしょうか?

猫の歯肉口内炎、尾側口内炎とも呼ばれます。

口内炎と言っても我々人間にできるものとは全く異なります。

非常に強い痛みを伴い、猫の食事や健康に大きな影響を与えます。

小原 健吾

監修者プロフィール:小原 健吾

所属学会:日本小動物歯科研究会、比較歯科学研究会 / 趣味:サーフィン、SUP

猫の口内炎とは

猫の口内炎は、歯肉(歯茎)だけでなく、頬や舌、上顎の粘膜に炎症が起こることが特徴です。
これは、歯肉や歯槽骨(歯を支える顎の骨)に発生する歯周病とは異なり、口内炎と歯周病は全く別の病気です。
特に尾側粘膜(写真〇部分)に炎症があるかどうかで2つの病気を見極めます。
また、慢性的な炎症のせいで肉芽腫(炎症によってできるコブのようなもの)があると腫瘍との判別が難しく、病理検査が必要になります。

● 猫の口内炎の原因

猫の口内炎は、ウイルス感染、口腔内細菌、歯周病、免疫系の異常、など、さまざまな要因が絡み合って発症しますが、はっきりとした原因は不明です。

・ウイルス感染
FIV(猫免疫不全ウイルス)、FeLV(猫白血病ウイルス)、FCV(猫カリシウイルス)、FHV(猫ヘルペスウイルス)との関連性が多く報告されています。
実際に診療をしていても、FIVとFeLVの検査は簡単に行えるためなのか、これらのウイルスに感染している猫の発症は多いです。

・口腔内細菌
これまで発表されている論文をみても、口内炎を引き起こす細菌は特定されていません。
しかし、抜歯を含めた徹底的なプラークコントロール(歯垢を減らすこと)で口内炎の症状は改善~完治するため、口腔内細菌と口内炎には強い関係性があると考えられています。
*歯垢は口腔内細菌の塊です。

・免疫の異常
歯周病の重症度や見た目の歯垢・歯石の量と口内炎の重症度は相関関係があるとは言い切れません。
口内炎を発症している猫は歯周病も併発していることが多いですが、重度な歯周病を発症していても口内炎を併発していない猫も多くいます。
また、口内炎を発症している猫では過剰な免疫反応が起きていることが分かっています。

以上のことから、猫の口内炎の根本の原因は分かっていませんが、
 歯に歯垢が付着することで過剰な免疫反応が起こって口内炎が発症する。
 発症しやすい猫としにくい(もしくはしない)猫がいる。
 特定の種のウイルスや細菌の感染が、口内炎の発症に関与している可能性がある。
と考えられています。

症状は歯周病と似たものが出ますが、一番の特徴は「ご飯が食べれなくなるほどの強い痛み」です。
他にも、ウエットフードしか食べない、体重減少、よだれが出る、口臭、毛づくろいができなくなるなどがあります。

下記のURLから歯周病の記事にリンクできますので、こちらも併せてご覧ください。
歯周病とは~前編~:https://www.hayama-mahoroba.com/journal/58/
歯周病とは~後編~:https://www.hayama-mahoroba.com/journal/108/

猫の口内炎の治療

外科治療と内科治療があります。
内科治療では根治ができないため、外科治療を推奨しています。

● 猫の口内炎の治療~外科治療~

全身麻酔をかけての抜歯を行います。
多くの場合口腔内に広範囲の炎症を持っているため、全臼歯抜歯(臼歯を全て抜く)あるいは全顎抜歯(すべての歯を抜く)が必要になります。
全臼歯抜歯か全顎抜歯のどちらを選択するか、そしてウイルス感染症の有無によって得られる治療効果は変わってきます。
1割程度の猫で、全顎抜歯をしても口内炎が残るといわれていますが、それでも抜歯をした方が症状は軽くなります。
臼歯を抜いてしまうと食べ物を噛めなくなりますが、痛くて食べられない方が本人的にもつらい状態です。

抜歯の際に残痕(歯根が折れて顎の骨に残ったままにすること)してしまうと口内炎は治りません。
処置を行う以前に歯が折れていたりすると、歯がないように見えても残痕のために口内炎が発生している可能性もあります。
残痕を防いだり発見するためには、歯科専用のレントゲン検査装置が必須となります。

当院での外科治療は基本的に日帰りで行っております。
翌日には電話でご様子をお伺いしたり、診察に来ていただくようお願いしています。
再診は処置後1週目、2週目、1か月後など細かく診させていただくことで、今後必要な治療やケアをご提案いたします。
抜歯の傷は2週間で治ることはほとんどです。

猫の口内炎の治療

持病などの理由で外科治療ができない時や、外科治療を行う前の治療として内科治療を選択する場合もあります。

● 猫の口内炎の治療~内科治療~

1)抗菌薬
口腔内細菌に対して使用します。
効果は一時的で、繰り返し使用しているうちに薬剤耐性菌を作ってしまう可能性があります。

2)消炎剤
主にステロイドが使われます。
有害事象が強く表れる可能性もあるので注意が必要です。
またステロイドで治療していた猫では、抜歯を行っても口内炎が治りにくいことが分かっています。

3)鎮痛剤
外科治療でも内科治療でも痛みのケアは必須です。
当院では鎮痛剤を、病院では注射で、ご自宅では液体の薬を口腔に垂らすようしてに処方しています。

4)インターフェロン製剤
抗ウイルス作用、免疫調整作用を期待して使用します。
抜歯後の口内炎など難治性のものには効果があるというデータがでています。

5)サプリメントやデンタルジェル
市場には多種多様の製品が流通していますが、無理なく毎日続けられ、エビデンスのあるものを選びましょう。
当院では善玉菌を補うサプリメントや、天然酵素の力で口腔内細菌の増殖を抑えるジェルをよく使用します。

これらの治療からその子その子に合ったものをご提案いたします。

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