JOURNAL診療記録

犬の膀胱炎

犬の膀胱炎は膀胱に炎症が起きる病気で、主に感染症が原因です。

犬の膀胱炎にはさまざまな種類があり、細菌による感染、尿路結石、膀胱の異常などが関与しています。

この記事では、犬の膀胱炎についてご説明いたします。

 

過去には猫の膀胱炎、猫の尿道閉塞の記事も掲載しておりますので、ご参照ください。

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診療記録|葉山まほろば動物病院|三浦郡葉山町一色|一般診療・専門診療

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小原 健吾

監修者プロフィール:小原 健吾

所属学会:日本小動物歯科研究会、日本獣医歯科学会、日本獣医エキゾチック動物学会 / 趣味:サーフィン、SUP

病態

細菌感染が最も一般的な原因です。
犬の膀胱炎のほとんどは細菌感染が関係しています。
原因となる菌は、大腸菌や腸球菌などの消化管内の細菌や、皮膚の常在菌であるブドウ球菌が一般的です。
細菌性膀胱炎を1年に3回以上繰り返している場合は「反復性細菌性膀胱炎」と呼ばれ、以下のような要因が関係しているとされています。

● 膀胱炎と関係のある要因

・尿路結石
犬の尿路結石症はストルバイト結石症とシュウ酸カルシウム結石症が全体の約9割を占めています。
ストルバイト結石症は尿路感染症に伴って発症することがほとんどで、内科的に結石を溶解している過程でも結石内に細菌が含まれているとの報告もあります。
またどのタイプの尿路結石症でも膀胱内に結石が存在すると、その刺激による痛みのため全ての尿を出し切ることができなくなり、感染症に罹りやすくなってしまいます。

・内分泌疾患(ホルモンの病気)
糖尿病やクッシング症候群などの内分泌疾患は免疫力が低下します。
また糖尿病では尿中の糖が細菌の栄養にもなります。

・腎臓病  
腎臓病により免疫力が低下したり、濃い尿が作られなくなる細菌と細菌感染に対する抵抗性が低下します。

・膀胱や外陰部の奇形
生まれつきこれらの構造に異常があると細菌がとどまりやすくなるため、感染が持続するリスクが大きくなります。
また肥満などの影響で外陰部が皮膚に埋もれてしまうと清潔な状態を保てなくなり、尿路感染が発生しやすくなります。

・尿失禁などの排尿障害
脊髄や膀胱の排尿をつかさどる神経の障害などにより、排尿のコントロールができなくなることがあります。
この場合は膀胱内の尿を完全に出し切ることができず、一度感染が発生すると持続しやすくなります。

・他:前立腺疾患、膀胱腫瘍、免疫抑制剤なども関連があります。

似たような症状で、尿道閉塞という病気があります。
雄に多く発生し、陰茎の尿道に結石などが詰まってしまう病気で、どれだけ尿を出そうとしていても全く出ないことが特徴です。
この状態を放置してしまうと命にも関わるので、緊急的に動物病院を受診する必要があります。

症状

犬の膀胱炎に見られる一般的な症状は以下の通りです。

● 膀胱炎の症状

頻繁に排尿しようとするが、少量しか出ない

排尿に時間がかかる

排尿時に痛みを感じているような様子(うなり声をあげる、姿勢が不自然)

血尿や濁った尿

不安そうに歩き回る

膀胱炎だけで食欲不振や元気がなくなることはあまりありません。
もし元気や食欲がなくなっている場合は、腎盂腎炎など別の泌尿器疾患を考える必要があります。

診断

診断のためによく用いられる検査をご説明します。

● よく用いられる検査

・尿検査
泌尿器疾患の診断には必須の検査です。
細菌の感染や、尿中に含まれるミネラル成分の結晶、尿中の細胞などを探したり、尿中に含まれる様々な成分を検出します。

・超音波検査
尿の溜まり具合、膀胱内の結石、腫瘍やポリープ、血餅(血球成分などが固まったもの)などを確認するための検査です。

・レントゲン検査
尿路結石を確認するための検査です。

・細菌培養同定、薬剤感受性試験
尿中に細菌がいた場合、それを増やして特定(培養同定)し、どのような抗菌薬が効くのかを調べる(薬剤感受性試験)検査です。
反復性細菌性膀胱炎の場合、これらの検査は強く推奨されます。
薬剤感受性試験により、最も効果的な抗菌薬を選定することができ治療の成功率が向上するだけでなく、抗菌薬に対して耐性を持つ細菌を早期に発見し拡大を防ぐことができます。

尿検査をするために、犬の負担軽減のため、ご自宅で尿を採ってきていただくことをお勧めしております。
お散歩やペットシートに排尿時にヒシャクのようなもので受け取ってください。
難しい場合にはペットシートを裏返しにしておくと、シートに吸われずに容器に移すことができます。
採れた尿は、動物病院へご持参いただくまでは常温で保管してください。

治療

一般的な膀胱炎の治療をご説明します。

● 一般的な膀胱炎の治療

・抗菌薬
膀胱炎治療の軸となる薬です
治療の初期では経験的によく用いられる薬剤を使用しますが、あまり良くならない場合は前述の細菌培養同定・薬剤感受性試験を行い、抗菌薬を選択します。

・痛み止め
膀胱炎による痛みを軽減するために、痛み止めが処方されることもあります。

・膀胱結石の治療
膀胱結石が認められた場合、溶けるタイプのものであれば特別な療法食を用いて治療を行います。
繰り返し結石ができてしまう場合は可能な限り療法食を食べ続けることもあります。
溶けないタイプの結石であれば、結石を取り除く手術を検討します。

・生活習慣の改善
水分摂取量を増やすこと、トイレを我慢させない工夫をすること、適度な運動量を行うことなどで膀胱炎の予防になります。

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